食や農業についての「想い」を実現したくて農業の道に入りました。
完全無施肥などの具体的な栽培法も、この想いを目指して考え導かれたものです。
想い
1.生命力溢れるものをつくる
わたしたち動物は、他の「いのち(生命)」をいただくことでしか自分の生命を維持できません。
栄養成分だけでなく、「生命エネルギー」「生命力」というものが大切だと考えます。
特に子供、高齢者、そして身体が弱っている人には、生命力の高いものが必要と思います。
生命力溢れるものは「おいしい!」。味覚だけでなく「からだ」でそう感じられます。
からだが「おいしい!」とよろこびます。
そして、いのちをいただいているからこそ、食べる前には「いただきます!」
2.園地内生態系を整える(生きもの達の共生)
りんごの花とみつばち
人間にとって大切なりんごの樹も園地内の生きもの達の一つに過ぎません。
無(低)農薬で樹が育ち果実が実ることができるのは、
- 樹自身の抵抗力免疫力が高まる からだけでなく、
- 病原や虫は居るけど
土中微生物、植物、虫同士(天敵)、虫を捕食する蛙や鳥などの動物、さらには病原をも含めた生態系が整っているおかげで大量発生しないから
りんごとかえる
です。
へびと鉢合わせ
例えば或る虫が大量発生すれば其の天敵にあたる虫が次に増えるということを繰り返しながら、何年もかかって生態系は整っていきます。
病虫害に遭いながら生き抜くりんごの樹も生命力が高まります。
そして、そのような園地では、訪れた人も元気になれるはず。
3.農業の永続性(生産者と消費者の共生)
食べることは生きること。
生産者が「生命あるもの」をつくることで消費者の「生命を継なぐ」、
消費者が安定して購入することで生産者の「生活を継なぐ」、
そのような「生産者と消費者の顔の見える共生関係」を目指します。
良いものは続かなければなりません。
大切にしていること
1.自分(心技体)を整える
世話している人の足音や視線が「肥やし」だという言葉があります。
植物は感じる力をもっているのです。
当然、私の体調はもちろん心の状態までが、りんごはじめ園地に影響を与えます。
効率的に作業をし怪我を予防するために体調を整える、
栽培技術をあげる、ということに加えて、
自分の心を整えることを心がけています。
5月下旬の園地
具体的には、園地で瞑想したり丹田呼吸等で呼吸を整えるなどしています。
毎日園地内を一回り、最低30分かけて全ての樹に目をかけながら歩いています。
心静かに、目の前にあるもの、今している作業に集中することを目指しています。
心のおしゃべりを無くして、心と身体が同じ処に向いている状態で仕事することを目指しています。
りんごの花と青空
普段は一人ですが、お手伝いに来ていただくことがあります。
その時心がけるのは、「楽しく作業してもらう」です。
わざわざお手伝いに来ていただいてるのだから当然のことですが、
園地にとっても、笑い声、楽しい会話、楽しい雰囲気が最高の「肥やし」になるとも思うからです。
楽しければ元気になる。人間も植物も同じですね。
2.観察
生態系を整え、薬剤使用量を減らす(無くす)には、りんごの木枝・葉・花や果実、草、土、虫を「観察」することが重要になります。
観察眼を鍛え日々観察することで、例えばタイミング良く薬剤を散布することが出来れば、少ない農薬量で効果的に病虫害を防除できます。
木村秋則氏曰く「目と手が農薬の代わり」です。
忙しい時期でも、日々の作業に追われ、作業をこなすようにならないよう心がけています。
3.足し過ぎない、手を加え過ぎない
無(低)農薬→化学薬剤の代わりに天然由来のモノを使用する
無化学肥料→有機肥料、堆肥を施す
ということを目にしますが、これは結局、「足す」「加える」発想という点で同じです。
生きもの達の生態系を整えて、生命力溢れるりんごを育てるには、自然の営みや生態系に、極力余分なものを「足さない」 ことが大切だと思います。