年間作業スケジュール
薬剤散布以外は手作業、というのが果樹栽培の大きな特徴です。
(当園の場合、散布も竿を持って歩き回るのでかなりの重労働)
また、数ある果樹の中で「色合い」の重要度が高く、しかも「熟せば自然に着色する」ものでもなく、「玉回し」等着色のための作業も必要です。
他方、「土にまみれる」作業がないので、あまり汚れず、薬剤散布とりんごの運搬以外は重労働もないです。
りんご栽培年間作業を、大まかにではありますが、季節を追ってご紹介します。
剪定(2月下旬〜4月、遅くとも開花までに)
剪定
剪去枝
枝を切って樹型と整える作業です。
品種毎の特徴、樹の元気さ、陽当たり、風通し等を勘案して枝を剪定していきます.
病虫害防除、りんごの味、安定した収穫量に直結する、りんご栽培の要となる作業です。
園主日焼け対策
ボッコ靴とかんじき
苗木つくり(雪融け後〜4月末)
苗木つくり
土台になる木(「台木」)に、つくりたい品種・木の枝の一部(「穂木」)を接木してつくります。
「穂木」にする枝は、発芽してしまわないように3月に切り出して冷暗所で保管しておきます。
接ぎ木(雪融け後〜4月末)
接ぎ穂加工
台木加工
接ぎ木完成
品種更新(新しい品種のものをつくる、増やす)には、その苗木を植える他に、既に有る樹の枝に、欲しい品種の枝(「穂木」)を接ぐ「接ぎ木」という方法があります。
もう既に樹が育っていて根も大きい分、接ぎ木による方が早く実が穫れだします。
苗木植え付け(雪融け後〜4月末)
文字通り苗木を植え付ける作業です。植え付け用の穴を掘るのが一苦労です。
腐乱病手当て
患部皮剥ぎ
泥塗り
ビニールで固定
年間通して行ないますが、樹の活動(成長)との関係で、5月くらい迄が重要です。
患部が細い枝にある場合は其処で切除。
太い枝や幹にある場合は、表皮を剥ぎ取り、其処に畑の土でつくった泥を塗って、乾かないようにビニール等を巻きます(「泥巻き」)。
薬剤散布(4月下旬〜7月末)
7月の散布
井戸から500リットルタンクに水を汲み上げ、80mのホースの先に付けた竿を持って、園地内を歩き回って散布します。
汲み上げと散布は、噴霧器エンジンで行ないます。
もちろん竿とホースは、低農薬用と、無農薬園地の食酢用とで分けています。
ゴアテックス製の合羽、帽子、ゴーグル、マスク、ゴム手袋、長靴で、自分自身を防護しています。
一番農薬の被害を被っているのは、実は私です(笑)。
摘花(5月中下旬)
花を摘む作業です。
樹は開花させるにも養分を使っているので、どうせ摘むなら早いうちに、ということです。
ただ当園では、この時期腐乱病手当て等他の作業で手が回らず実際にはやれてません。
摘果(5月下旬〜7月)
摘果前
摘果後
結実した実を摘む作業です。
りんごは、真ん中に大きな花が咲き(「中心花」ちゅうしんか)、その周りに4つの花が咲いて(「側花」そっか)、この5つの花で1セットになっています。
それぞれの花が受粉結実したものを、「中心果」(ちゅうしんか)、「側果」(そっか)と言います。
摘果作業は何巡か(当園では2〜3回)かけておこないます。
○ 第一摘果(〜6月末)
摘果前 (6月上旬)
摘果後(6月上旬)
確実に「成らせない」ものを摘みます。
具体的には、
- 側果は全部落として、中心果のみを残していきます。
- 昨年新しく伸びた枝に着いたものは全て落とします。
- 枝の真下や真上も実を成らせないので全て落とします。
一巡目を早く終わらせることが、樹の養分を浪費しないことになり、その年はもちろん、翌年の収穫にも影響してきます。
○ 第二摘果(〜7月中旬)
摘果前(7月上旬)
摘果後(7月上旬)
一回目で残した中心果からさらに間引いていきます。
型、虫食い、成ってる場所、果実同士の間隔、などを勘案して摘みます。
○ 見直し摘果(〜7月末)
文字通り見落としたもの、その後の生育が悪いものを摘みます。
夏剪定(8月)
枝の成長は7月には止まります。
成長が止まった後は枝を切っても樹に与えるダメージが少ないので、風通しや陽当たりを遮る程に伸びた余分な枝を切り落とします。
病虫の温床になるのを防ぐと共に、着色を良くするためです。
早生種着色管理(8月末〜9月上旬)
○ 草刈り
草刈り後
草刈り前
刈り払い機
乗用草刈り機
地肌を出して秋の訪れを樹に知らせます。
基本的にゴーカートの様な乗用タイプで、その他根元周りや支柱周りの細所は刈り払い機でおこないます。
○ 支柱入れ
支柱入れ
枝を支柱で下から持ち上げることで、よく陽が入って、下の枝や奥の枝の果実も着色するようにします。
○ 葉摘み
北斗 葉摘み前
北斗 葉摘み後
果実面によく陽が当たり着色が進むようにする作業です。
当園では、極力葉を摘まないようにしています。
果実面に付いた葉は取り除きます。
そこだけ色ムラができるのと、葉の付着面から傷む場合があるからです。
○ 玉回し
陽の当る面は着色しますが、当らない面は着色が進まずムラがでます。
また、陽が当たる方が糖度が上がります。
そこで、果実を一つずつ回して向きを変えてあげます。収穫まで、何度も。
玉回し後
玉回し前
玉回し前
玉回し後
早生種収穫(つがる 9月中下旬)
つがる収穫 まずは手かごへ
箱に詰め替えて一輪車で搬出
当園の収穫トップバッターは「つがる」です。
早生・中生種は、同じ品種、同じ樹でも熟度の差が大きいので、何回かに分けて収穫します(「選りもぎ」と言います)。
中生種・晩生種 着色管理(9月下旬〜10月中旬)
中生種収穫(10月中下旬)
ふじ収穫(11月上中旬)
一気に(と言っても量が多いので2〜3回に分けて)収穫します。
軽トラで倉庫へ
収穫後の楽しい昼食
選果(全品種)
サイズ別に仕分け
収穫、即発送とはいきません。
手際良く発送するためには、「選果」作業が必須です。
大きさ、色合い、型、病虫害の有無や程度等で生食用と加工用に選別し、生食用はサイズ別に箱を分けて保管します。
りんご農家をやって初めて知った手間のかかる作業はいくつかありますが、そのうちの一つです。
直接お客様のところに届くものですから、かなり気も遣います。
ただ、農薬を減らす(無くす)以上、鳥はもちろん病原や虫の取り分も許容する心持ちが必要と思っています。
人間だけが良いとこ取りはできません。
なので、食味や日保ちに影響が無い範囲で、型の歪さ、色ムラ、病虫害痕が多少あっても、それが「自然」ということで、贈答用以外にはお入れしています。
(実は、病虫害痕を治すべく樹は沢山の養分を注ぐので、病虫害果は特別美味しいことが多いんです!)
冬支度(10月中旬、11月下旬〜雪で畑に行けなくなる12月上中旬)
苗木 雪囲い
1年間頑張ってくれた樹への感謝を込めて作業してます。
とはいえ、ふじの選果・発送と併行して、降雪積雪と競争しながらの作業なので心身ともにキツいです。
早生種つがるは、10月中旬のうちにやれる作業をやってしまいます。
- 幹周り(半径50センチくらい)を、地肌が完全にでる程に草を刈り込みます。幹や根のネズミによる食害を防ぐためです。
- 肥料袋(他所から貰ってきます)で苗木、若木の幹を囲います。ネズミやウサギによる食害、雪害(積雪で折れたり割れたり)から守る為です。いろいろ試しましたが、使い終えた肥料袋を巻くのが一番効果があるようです。
- 支柱入れ
機械収納 - 春に台木に接いでつくった苗木(0歳木)は弱いので、掘り返して土付きのまま乾かないようにビニール袋(45リットルゴミ袋)に入れて冷暗所で保管します。
- 草刈り機、運搬車等、普段ブルーシートを掛けてるだけの機械をコンテナに収納します。
支柱入れ